「精密板金ってどのくらい精密な加工ができるんだろう?」
複雑な加工を実現したくて精密板金に興味を持った方は、こういう疑問を持つかもしれません。
そこで今回は、複雑な形状の加工を可能にする精密板金について解説いたします。
メリットや注意点だけではなく業者の選び方も解説するので、精密板金を検討する際の参考にされてください。
精密板金とは
精密板金とは、0.1mmから3mm程度の薄い金属板を高い精度で加工する技術です。
切断、曲げ、穴あけなどの加工を組み合わせて、複雑な形状の部品を製作します。
近年では、電子機器や通信機器の小型化・高性能化に伴い、より精密な板金加工が求められるようになりました。
精密板金は、スマートフォンやパソコンなどの筐体(きょうたい)、内部の部品、さらには半導体製造装置や自動車部品など、さまざまな分野で利用されています。
高い精度と品質が求められる部品製造を支える、重要な技術と言えるでしょう。
高精度な加工技術
精密板金加工は求められる精度が非常に高く、場合によっては±0.1mm以下の寸法公差を満たす必要があります。
レーザー加工は、このような高精度な加工を実現できる技術のひとつです。
レーザー光を極めて細く集光することで、材料を正確に切断したり、微細な穴あけ加工を行ったりすることが可能。
この高精度の加工技術によって、複雑で精密な形状の製品を製作できます。
たとえば、電子機器の筐体や精密機械の部品など、高い寸法精度が求められる製品に、レーザー加工は欠かせない技術となっています。
多様な材料を加工できる
精密板金加工では、鉄やステンレスといった一般的な金属材料だけでなく、アルミニウム、銅、真鍮など、さまざまな金属を加工できます。
それぞれの材料は、強度、耐食性、熱伝導性、加工性など異なる特性を持っているため、加工方法も材料に合わせて調整しなくてはいけません。
たとえば、アルミニウムは軽量で加工しやすい一方、熱伝導率が高いため、レーザー加工では熱変形に注意が必要です。
銅は熱伝導率と電気伝導率に優れていますが、硬度が低いため、加工時に傷がつきやすい側面があります。
真鍮は美しい光沢を持ち、装飾品などに用いられますが、加工硬化を起こしやすいため、加工条件の調整が重要です。
このように、精密板金加工は、多様な材料に対応できる柔軟性があるのが特徴です。
材料の特性を理解し、適切な加工方法を選択することで、高品質な製品を製作できます。
コスト効率に優れている
精密板金加工において、レーザー加工はコスト効率に優れている点が大きな魅力です。
プレス加工のように専用の金型を必要としないため、初期費用を抑えられます。
特に、試作品や小ロットの製品を製作する場合、金型製作費用が大きな負担となるでしょう。
レーザー加工であれば金型が不要なため、試作品製作や多品種を少量生産したいときに最適です。
さらに、金型製作の時間を省略できるため、製品開発のスピードアップにもつながります。
新製品をいち早く市場に投入したい場合にも、レーザー加工は有効な手段となるでしょう。
幅広い応用分野
精密板金加工は、その高い精度と柔軟性から、さまざまな分野で求められています。
たとえば医療機器では、手術器具やインプラントなど、人体に直接触れる部品に精密板金が用いられています。
高い精度と耐久性が求められる医療機器の部品製作は、患者の安全を守るうえで重要な役割を担っているのです。
ほかにも半導体装置では、ナノメートルレベルの精度が求められる部品も存在します。
精密板金加工は、そのような極めて高い精度が要求される部品の製造にも対応しており、半導体産業の発展を支えている技術です。
このように、精密板金加工は医療や半導体など高い精度が求められる分野で重要な役割を果たし、現代社会を支える基盤技術のひとつになっています。
精密板金加工の材料
精密板金加工に使用される材料は、主に金属材料が中心です。たとえば、以下のような種類があります。
鉄鋼材料
精密板金加工で頻繁に用いられる材料のひとつに、鉄鋼材料があります。鉄鋼材料は、鉄を主成分とした合金で、強度や加工性、耐食性に優れていることから、さまざまな産業分野で広く利用されています。
精密板金加工で使用する鉄鋼材料としては、冷間圧延鋼板(SPCC)、熱間圧延鋼板(SPHC)、ステンレス鋼(SUS304、SUS316)などが挙げられます。
冷間圧延鋼板は、表面が滑らかで精度が高く、加工しやすい特徴があります。熱間圧延鋼板は、冷間圧延鋼板に比べて安価で、強度が高いです。
ステンレス鋼は、クロムなどを添加することで耐食性を向上させた鉄鋼材料です。最も一般的なステンレス鋼であるSUS304は、耐食性、加工性、溶接性に優れています。
SUS316は、SUS304にモリブデンを添加することで、耐食性をさらに向上させた材料です。特に、化学薬品や海水などに触れる環境で使用される精密板金部品には、ステンレス鋼が適しています。
鉄鋼材料は、その優れた特性から、精密板金加工において幅広い用途で使用されています。
アルミニウム
アルミニウムは、精密板金加工においても、その軽量性と強度、そして加工性の良さから、幅広く利用されている金属材料です。鉄や銅に比べて密度が低いため、軽量化が求められる製品に最適です。
アルミニウムは、純アルミニウムのまま使用されることは少なく、さまざまな元素を添加した合金として利用されることが一般的です。
精密板金加工でよく使用されるアルミニウム合金としては、A1050やA5052などが挙げられます。
A1050は純アルミニウムに近く、加工性や耐食性に優れています。A5052は、マグネシウムを添加することで強度を向上させた合金で、強度と加工性の両立が叶うのが特徴。
アルミニウム合金は、航空機、自動車、鉄道車両など、輸送機器の構造材として広く利用されています。また近年では、スマートフォンやタブレット端末など、電子機器の筐体にもアルミニウム合金が採用されるケースが増えています。
アルミニウムはその特性から、精密板金加工においても重要な役割を担っているのです。
銅および銅合金
銅は、その優れた電気伝導性と熱伝導性から、精密板金加工においても重要な役割を担う金属材料です。電気配線や電子部品、熱交換器などに用いられています。
精密板金加工で使用する銅には、導電性や熱伝導性に優れたC1020やC1100といったグレードが一般的です。これらの銅は、加工しやすいため、複雑な形状の部品を製作するのにも適しています。
銅合金は、銅に他の金属を添加することで、強度や耐食性、加工性を向上させた材料です。真鍮や青銅などが代表的な銅合金で、精密板金加工にも広く利用されています。
真鍮は、銅と亜鉛の合金で、美しい金色と優れた加工性を持ち合わせています。装飾品や楽器、日用品など、さまざまな用途に使用されているのが特徴です。
青銅は、銅と錫(すず)の合金で、耐食性や耐摩耗性に優れています。機械部品や彫刻、美術品などに用いられます。
特殊金属
精密板金加工では、一般的な鉄鋼材料やアルミニウムに加えて、チタンやニッケル合金といった特殊金属が使用されるケースもあります。これらの特殊金属は、優れた特性を持つ反面、加工が難しい側面もあるのが特徴。
チタンは、軽量かつ高強度、そして耐食性に優れた金属です。航空宇宙産業や医療分野など、高い信頼性が求められる分野で利用されています。
しかし、チタンは反応性が高く、高温での加工を行うと酸化しやすい特徴があります。そのため、精密板金加工においては、加工条件の厳密な管理が必要です。
ニッケル合金は、高温強度や耐食性に優れた合金です。航空機エンジンや発電プラントなど、過酷な環境で使用される部品に用いられています。
ニッケル合金は、硬度が高く、加工が難しい材料ですが、精密板金加工技術の進歩により、複雑な形状の部品を製作することが可能です。
非金属材料
精密板金加工というと金属材料を扱うイメージが強いですが、実は一部の非金属材料にも対応しています。代表的なものとしては「合成樹脂板」があります。
合成樹脂板は軽量で加工しやすく、耐薬品性に優れている特徴があります。そのため、特定の用途においては、金属材料の代替として用いられることが多いです。
精密板金加工では、製品の用途や要求される性能に合わせて、最適な材料を選択することが重要です。材料の選定は、製品の品質、耐久性、コストなどに大きく影響します。
たとえば、屋外で使用する製品の場合、耐食性に優れたステンレス鋼などを使用することが一般的です。しかし、合成樹脂板のなかには、耐候性に優れたものもあり、そのような材料を選択することで、表面処理を省略できる場合があります。
精密板金加工のプロセス
精密板金の主な工程は以下の通りです。
設計・図面展開
精密板金加工は、設計から始まるといっても過言ではありません。設計段階では、求められる機能や性能を満たすだけでなく、加工のしやすさ、コスト、精度など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
熟練した設計者は、3次元CADなどの設計ツールを駆使し、精密な板金部品の設計を行います。この際、単に形状を設計するだけでなく、材料の特性、加工方法、コスト、納期などを考慮しながら、最適な設計をすることが大切です。
設計が完了したら、次は図面展開をします。図面展開とは、3次元モデルをもとに、実際に加工するための2次元図面を作成する作業です。
この図面に記載されるのは、部品の形状、寸法、材質、加工方法など。
正確でわかりやすい図面は、加工の効率化と品質向上に大きく貢献します。図面にもとづいて、加工担当者は材料の選定、加工機の選定、加工条件の設定などを行います。
精密板金加工において、設計・図面展開は、高品質な製品を効率的に製作するための最初のステップであり、非常に重要な工程です。
ブランク加工(切り出し)
精密板金加工の最初の工程となるのが、ブランク加工です。ブランク加工とは、コイル状またはシート状の金属材料から、必要な形状の板材を切り出す作業のこと。
この切り出し工程では、レーザー加工機やタレットパンチプレスといった機械が使用されます。レーザー加工機は、レーザー光を用いて材料を溶断することで、複雑な形状も高精度に切り出せます。
一方、タレットパンチプレスは、金型を用いて材料を打ち抜くことで、比較的シンプルな形状の板材を効率的に切り出せるのが特徴です。
ブランク加工では、製品の外形や必要な穴などを作り出すだけでなく、後の工程で曲げ加工などを施すための準備を行います。正確なブランク加工は、最終的な製品の精度を左右する重要な工程です。
前段加工
ブランク加工によって必要な形状に切り出された板材は、次の工程である曲げ加工へと進みます。曲げ加工をスムーズに行い、高品質な製品に仕上げるために、前段加工と呼ばれる工程が必要となります。
前段加工では、バリ取りやタッピングといった作業が行われます。バリ取りとは、切断面などに残ったバリと呼ばれる突起を取り除く作業です。
バリがあると、曲げ加工の際に干渉したり、製品の外観を損なったりする可能性があります。
タッピングとは、ねじ穴を作る作業です。曲げ加工後にねじ止めを行う必要がある場合、前段加工の段階でタッピングを済ませておくことで、組み立て作業を効率化できます。
前段加工は、一見地味な作業ですが、後の工程の効率や最終的な製品の品質に大きく影響します。精密板金加工では、それぞれの工程が密接に関連しており、一つひとつの工程を丁寧に進めることが、高品質な製品を生み出すために不可欠です。
曲げ加工
精密板金加工において、平面の板材から立体的な形状を作り出す工程が、曲げ加工です。プレスブレーキと呼ばれる機械を用いて、金属板を挟み込み、金型で押さえつけて所定の角度に曲げていきます。
曲げ加工は、精密板金加工の中でも特に重要な工程の一つであり、製品の精度や強度を左右する重要な要素です。曲げ角度や曲げ位置のわずかなずれが、最終的な製品の品質に大きく影響してしまうため、高い精度が求められます。
精密な曲げ加工を行うためには、プレスブレーキの性能はもちろんのこと、熟練した技術者の経験と勘が欠かせません。材料の特性や板厚、曲げ角度などを考慮しながら、最適な加工条件を設定することで、高精度な曲げ加工を実現できます。
近年では、CNC制御による自動化が進み、より高精度で効率的な曲げ加工が可能となっています。しかし、複雑な形状や高い精度が求められる場合は、依然として熟練した技術者による手作業が必要となる場面もあります。
溶接加工
精密板金加工において、複数の部品を一体化させる工程が溶接加工です。曲げ加工などで成形された部品を組み合わせて、接合部分に熱を加えることで溶かし合わせ、強固に接合します。
溶接方法は、材質や形状、求められる強度などに応じて適切な方法が選択されます。レーザー溶接、スポット溶接、TIG溶接など、さまざまな溶接方法があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
レーザー溶接:レーザー光を熱源として溶接する方法で、精密な溶接が可能
スポット溶接:電極を用いて板材同士を加圧し、通電して溶接する方法で、主に薄板の溶接に適している
TIG溶接:タングステン電極を用いてアークを発生させ、溶接する方法で、さまざまな金属材料に対応可能
溶接加工は、精密板金加工の最終工程に位置付けられることが多く、製品の強度や耐久性を左右する重要な工程です。熟練した技術者によって、適切な溶接方法が用いられて、高品質な製品が作り上げられます。
仕上げ加工
溶接加工が完了した製品は、そのままでは表面に凹凸やバリが残っている場合があります。そこで、仕上げ加工と呼ばれる工程を経て、製品の外観品質を高めることが大切でし。
仕上げ加工では、まず溶接部分の凹凸を研磨することで、表面を滑らかに整えます。研磨には、グラインダーや研磨剤などが使用され、熟練した技術者によって丁寧に作業が行われます。
さらに、必要に応じて、塗装やメッキなどの表面処理を実施。塗装は、製品の外観を美しくするだけでなく、防錆や耐摩耗性などの機能性を付加できます。
メッキは、金属の表面に別の金属を薄くコーティングする処理で、耐食性や導電性などを向上させられるのがメリットです。
検査・納品
精密板金加工の最終工程となるのが、検査・納品です。厳しい品質基準をクリアした製品のみが、お客様のもとへ届けられます。
検査では、完成した製品が図面通りに製作されているか、寸法、形状、精度などを、ノギスやマイクロメーターなどの測定器具を用いて、細部まで丁寧に確認します。
また、外観検査では、傷や汚れ、塗装のムラなどがないか、目視で確認します。さらに、機能検査では、製品が設計通りの性能を発揮するかを確認。動作確認や耐久性試験などを行い、製品の品質を保証します。
これらの検査工程をすべてクリアした製品のみが、合格品として出荷されます。精密板金加工では、高い品質を維持するために、検査工程にも力を入れ、徹底した品質管理が行われているのです。
こうして、厳しい検査をパスした製品が、お客様のもとへ届けられ、さまざまな製品の一部として活躍することになります。
精密板金がよく活用されている分野
精密板金技術は、以下のような分野で広く活用されています。
電子機器筐体
私たちの身の回りには、スマートフォン、パソコン、タブレット端末などのさまざまな電子機器があります。これらの機器を外部の衝撃や埃から保護し、内部の電子部品を収納するのが筐体です。
精密板金加工は、この電子機器筐体の製造に欠かせない技術と言えるでしょう。電子機器筐体には、軽量化、放熱性、電磁波シールド性など、さまざまな機能が求められます。精密板金加工は、これらの要求に応えられるのです。
たとえば、アルミニウムやマグネシウム合金などの軽量な金属板を精密に加工することで、軽量かつ高強度な筐体を製作できます。また、筐体表面に放熱フィンを設けることで、内部の熱を効率的に逃がせます。
さらに、電磁波シールド性を高めるために、特殊な金属材料や表面処理を施すことも可能です。
精密板金加工の高い精度によって、複雑な形状や細かいディテールを持つ筐体も製造できます。近年では、デザイン性も重視される傾向があり、美しい曲面やエッジを表現するのにも精密板金加工は有効です。
自動車部品
精密板金加工は、自動車産業においても幅広く活用されています。エンジン部品、車体フレーム、内装部品など、さまざまな部品に精密板金加工技術が用いられているのです。
自動車部品には、軽量化、強度、耐久性、安全性など、さまざまな要求性能があります。精密板金加工は、これらの要求に応えられる柔軟性と高精度を兼ね備えた技術です。
たとえば、車体フレームには、軽量で高強度なアルミニウム合金などが用いられます。精密板金加工によって、複雑な形状のフレームを高い精度で製作することで、車体の軽量化と強度向上も実現可能です。
また、エンジン部品には、高温や高圧に耐えられる耐熱性や耐久性が欠かせません。精密板金加工によって、複雑な形状のエンジン部品を製作することで、エンジンの性能向上に役立っています。
さらに、デザイン性や快適性も求められる内装部品においては、美しい曲面や複雑な形状を表現でき、内装デザインの自由度を高められます。
医療機器
医療機器は、人命に関わるため、非常に高い精度と品質が必要です。
精密板金加工は、その精度と品質の高さから、手術用具、診断装置、治療機器などの医療機器の製造にも広く活用されています。
医療機器に用いられる精密板金部品は、人体に直接接触するものもあるため、生体適合性や衛生面にも配慮が必要です。精密板金加工では、ステンレスやチタンなど、耐食性や生体適合性に優れた材料を使用することで、これらの要求に応えています。
さらに、近年では、患者の体に合わせたオーダーメイドの医療機器の需要が高まっています。精密板金加工は、3次元CADデータなどを用いることで、複雑な形状の部品を製作でき、オーダーメイドの医療機器の製造にも対応可能です。
航空宇宙産業
航空機や宇宙船の部品には、極限の環境に耐えうる耐久性と、機体重量を軽減するための軽量化が求められますが、精密板金加工はこれらの要求を高いレベルで満たすことが可能です。
航空機では、翼や胴体、エンジン部品など、さまざまな部分に精密板金加工が用いられています。軽量で高強度なアルミニウム合金やチタン合金などを精密に加工することで、航空機の安全性を確保しつつ、燃費向上も実現可能です。
また、宇宙船では、過酷な温度変化や放射線に耐えられる特殊な材料が使用され、精密板金加工はこれらの特殊材料を複雑な形状に加工できるため、宇宙開発の進歩も支えています。
さらに、近年注目されているドローンや人工衛星などの分野でも、精密板金加工の技術が活用されています。小型化、軽量化、高性能化が求められるこれらの製品において、精密板金加工は欠かせない技術と言えるでしょう。
精密板金加工の具体的な用途
精密板金加工の具体的な用途は以下の通りです。
薄板アルミのホッパー
ホッパーとは、粉体や粒体などの材料を貯蔵したり、搬送したりするための容器です。さまざまな形状がありますが、精密板金加工では、主に円錐形や角錐形のホッパーが製作されます。
近年、軽量化のニーズが高まり、ホッパーの材料としてアルミニウムが注目されています。しかし、アルミニウム、特に薄板アルミニウムは、溶接が難しいという課題がありました。
従来の溶接方法では、薄板アルミニウムを溶接すると、熱で溶け落ちたり、歪みが発生したりすることが多く、隙間のないホッパーを製作することは困難だったのです。
しかし、ファイバーレーザー溶接技術の登場により、薄板アルミニウムのホッパーを高精度に製作することが可能になりました。ファイバーレーザー溶接は、熱影響範囲が狭いため、歪みを抑えながら溶接できます。
また、レーザー光を精密に制御することで、溶け落ちを防ぎ、隙間のない美しい溶接面を実現します。
金属製のギヤ
精密板金加工の技術を用いることで、金属製のギヤを製作することが可能です。従来、ギヤの製作には切削加工が主流でしたが、近年ではレーザー切断技術の進歩により、精密板金加工でも高精度なギヤを製作できるようになりました。
レーザー切断を用いたギヤ製作には、複数のメリットがあります。まず、従来の切削加工では実現が困難だった複雑な形状のギヤを製作することが可能になります。また、切削加工と比較して加工速度が大幅に向上するため、短納期での製作に対応可能です。さらに、材料の無駄が少なくて済むため、製造コストも削減できます。
ただし、レーザー切断で製作したギヤは、切削加工に比べて表面粗さが大きくなる傾向があります。そのため、高速回転で使用するギヤには不向きです。しかし、低速回転で使用するギヤであれば、十分な性能を発揮できます。
大型のギヤを製作する場合、切削加工では費用が大幅に増加してしまうのに対し、精密板金加工であれば、比較的低コストで製作できるでしょう。
精密板金加工によるギヤ製作は、コストを抑えつつ、高精度なギヤを製作できる有効な手段と言えます。
銅板のスポット溶接加工
銅は、優れた電気伝導性と熱伝導性を持つため、電気・電子部品や熱交換器などに広く利用されています。
しかし、銅は熱伝導率が高いため、溶接加工が難しい材料でもあります。溶接時に熱が拡散しやすく、溶接部分が溶け落ちたり、歪みが発生したりする可能性が高いです。
精密板金加工においても、銅板を接合する際には、これらの課題を克服する必要があります。そこで有効な手段となるのが、スポット溶接です。
スポット溶接は、電極を用いて板材同士を加圧し、通電することで接合する方法です。溶接時間が短く、熱影響範囲が狭いため、熱による歪みを最小限に抑えられます。
特に、無酸素銅(C1020)のような純度の高い銅板をスポット溶接する場合、高い導電性と耐食性を維持することが重要です。スポット溶接は、母材を溶融させることなく接合できるため、材料の特性を損なうことなく、高品質な接合を実現できます。
精密板金加工における銅板のスポット溶接は、高い技術力と経験が必要です。溶接条件を適切に設定することで、熱ひずみを抑制し、導電性と耐食性を両立した高品質な接合部を作り出せます。
テーラードブランク材料の曲げ加工
精密板金加工は、材料や加工技術を組み合わせることで、多様なニーズに対応可能です。その一例として、テーラードブランク材料の曲げ加工があります。
テーラードブランクとは、異なる板厚や材質の金属板を組み合わせ、溶接などで接合した材料のことです。この事例では、SUS304のエンボス鋼板と冷間圧延鋼板を積層し、一体化させた材料を使用しています。
しかし、テーラードブランク材料は、材質や板厚が異なる部分を同時に曲げ加工するため、高い技術力が求められます。曲げ角度や金型の選定、加工条件などを適切に設定することで、歪みや割れなどを防ぎ、高精度な曲げ加工を実現できるでしょう。
精密板金の注意点
精密板金加工では、高精度な加工を実現するために専門の設備と技術が不可欠です。
特に高精度な製品を製作する場合は、レーザー加工機などの最新設備による自動制御が必要になります。
ここでは、精密板金加工における重要なポイントを解説しますので、加工方法の選定にお役立てください。
細かい寸法調整が必要
精密板金加工では、極めて厳密な寸法精度が求められます。
多くの場合、部品は他の機械や装置と組み合わせて使用されるため、高精度での製作が不可欠です。特に曲げ加工では、最新のベンディングマシンによる自動制御が欠かせません。
現代の製造業では±0.2mmといった厳密な公差が求められることも多く、このような高精度な加工を実現するためには、最新のレーザー加工機による自動制御が不可欠です。人手による加工では、このレベルの精度を安定して実現することは極めて困難といえるでしょう。
素材選定が重要
精密板金加工では、加工する金属の種類によって方法が大きく異なるため、素材選びも非常に重要です。
ステンレス、銅、真鍮、アルミニウムなど、それぞれに異なる特性があり、適切な加工方法を選択しなければ希望どおりの製品が作れません。
たとえば、ステンレスは耐食性に優れていますが、硬度が高いため加工には工夫が必要です。
アルミニウムは軽量ですが、熱伝導率が高いため、レーザー加工では熱変形に注意が必要でしょう。
銅や真鍮も熱伝導性が高く、レーザー光を吸収しやすいため、溶接や切断の際に溶けすぎたり、変形したりする可能性があります。
このように精密板金加工を行う際には、まず素材の特性をしっかりと理解することが大切です。
そのうえで、加工方法やレーザー出力などを調整することで、高品質な製品を製作できるようになります。
コスト管理が求められる
精密板金加工は、少量多品種の生産に適しており、試作品製作やカスタマイズ性の高い製品を作る際に強みを発揮します。しかし大量生産するとなると、加工コストや人件費が増加しやすいです。
一つひとつの工程に高い精度が求められるため、どうしても人手に頼る部分が多く、人件費がかさんでしまう課題もあります。
また、材料費や加工に使用する電力なども、生産量に比例して増加します。そのため、精密板金加工で大量生産を行う場合は、コスト効率を意識した生産計画が重要です。工程の標準化や自動化を進めることで、人件費を削減できるでしょう。
加えて、材料の調達方法や加工方法を工夫することで、材料費や加工コストを抑えられます。
曲げ加工時のリスクがある
精密板金加工のなかでも、曲げ加工は特に高い技術と注意力を要する工程です。材料の特性や加工条件によって、さまざまなリスクが発生する可能性があります。
そのひとつが、「スプリングバック」と呼ばれる現象です。これは、曲げ加工後に材料が元の形状に戻ろうとする性質のことで、狙い通りの形状を得るためには、このスプリングバックを考慮しなければいけません。
まず、スプリングバック量を予測し、目標角度よりも大きく曲げる「オーバーベンド」を行ったり、曲げ半径や加圧力、金型温度などの加工条件を最適化し、スプリングバックの影響を抑制します。
また、材料選定の段階で、製品特性を満たしつつスプリングバックの少ない材料を選択することも重要です。さらに、コンピュータシミュレーションや試作による事前検証を行い、データを製造プロセスにフィードバックすることで、高精度な加工を実現できます。
加えて、板金の厚さによっても、曲げ加工の難易度は変わります。
薄い板材では、補強リブの設置や適切な金型サポートを使用し、変形を防ぎます。一方、厚い板材では、適切な大型プレス機の使用や、材料厚の3倍以上の曲げ半径設定が必要です。穴あけ加工がある場合は、曲げ部分から穴までの距離を材料厚の3倍以上確保し、応力集中を避けます。
また、事前の試作品検証やCAEシミュレーションによる変形予測、工程順序の最適化も重要です。さらに、定期的な寸法検査や材料ロットごとの特性確認、加工条件の記録管理を行うことで、品質リスクを低減できます。
溶接時は材料の特性を考慮する
精密板金加工において、溶接は部品同士を接合する際に欠かせない技術です。そして、溶接を行う際には、材料の特性を考しなければなりません。
特に、アルミニウムは熱伝導率が高いため、溶接部の温度が急激に上昇し、冷却時に収縮することで歪みが生じやすいです。この歪みを放置すると、製品の精度や強度が低下するだけでなく、外観不良にもつながる可能性があります。
歪みを最小限に抑えるためには、溶接条件の適切な設定が重要です。溶接電流や溶接速度、熱入力などを調整することで、歪みの発生を抑制できます。
また、溶接ジグを使用することで、部品を固定し、歪みを防ぐことも有効です。アルミニウムのように熱伝導率が高い素材には、熱影響範囲が狭く歪みにくいファイバーレーザー溶接が適しています。
材料によっては、溶接以外の接合方法を検討することも有効です。接着剤やリベットなどさまざまな接合方法があり、材料や用途に合わせて最適な方法を選択することで、高品質な製品を製作できるでしょう。
精密板金加工で使用される機械
精密板金加工では、材料や加工方法に合わせて機械を選ぶ必要があります。
使用する機械によって特徴や注意点が異なるため、ポイントを押さえて最適なものを選択しましょう。
レーザー加工機
レーザー加工機は、従来の加工方法に比べて非常に高い精度での加工ができ、精密板金に欠かせない機械です。
極細に集光したレーザー光によって、髪の毛よりも細い線を描くような切断が可能です。これにより、複雑な形状や細かいディテールを持つ部品も正確に製作できます。
また、CADデータにもとづいてレーザー光を制御することで、設計の自由度が飛躍的に高まります。
加えてレーザー加工機は、薄い材料を加工するのも得意です。たとえば、薄い金属板やフィルムなどを高速かつ高精度に切断できるため、軽量化が求められる製品に向いています。
レーザー加工機は、精密板金加工の可能性を広げる重要なツールと言えるでしょう。
タレットパンチプレス
タレットパンチプレスは、材料に穴あけや打ち抜き加工を行う機械です。
タレットと呼ばれる回転式の金型ホルダーに、さまざまな形状のパンチ(金型)をセットして使用します。
多様な形状の穴を迅速に加工できる点が、大きなメリットです。
丸や四角はもちろん、星形や多角形など、さまざまな形状のパンチを装着することで、設計の自由度が広がります。
また、タレットパンチプレスの操作は自動化できるため、高速かつ大量の加工が可能です。
材料の搬送やパンチの交換も自動で行われるため、人為的なミスを減らし、安定した品質の製品を効率的に生産できます。
さらに、高精度な位置決めと制御もできます。
材料の位置やパンチの動作をコンピュータで制御することで、複雑なパターンや細かいディテールも正確に再現が可能。
タレットパンチプレスは、その汎用性と生産性の高さから、精密板金加工の幅広い分野で活躍しています。
プレスブレーキ
プレスブレーキは、平面の板材を曲げて立体的な形状を作る機械です。
特に高精度な曲げ加工が求められる場面で活躍します。
CNC(コンピュータ数値制御)を搭載したプレスブレーキは、金属板を正確な角度に曲げられるので、複雑な形状の製品も高い精度で加工できます。
また、小型〜大型部品までさまざまなサイズの金属板に対応できるのもプレスブレーキの特徴です。
加工する板材のサイズに合わせて、適切なプレスブレーキを選択することで、効率的に加工できます。
さらに自動化された操作によって、高い生産性を実現することも可能。
材料のセットや曲げ加工の動作を自動で行うことで、作業効率がアップし、短時間で大量の部品を加工できます。
プレスブレーキは、精密板金加工の効率化と高精度化を両立させる、重要な加工機と言えるでしょう。
溶接機
溶接機は、部品同士を強固に接合するために欠かせない設備です。
レーザー溶接機は、レーザー光を熱源として金属を溶かし接合する溶接機で、精密板金加工に最適です。
レーザー光は非常に細く集光できるため、微細な部分の溶接や複雑な形状の部品の接合に適しています。
また、熱影響範囲が狭いため、溶接による熱ひずみを最小限に抑えることが可能です。
精密板金加工では、ステンレス、アルミニウム、銅など、さまざまな種類の金属材料が使用されます。
そのため、溶接機は多様な材料に対応できる必要があり、材料に合わせて適切な溶接条件を設定することが重要です。
近年では、熱ひずみをさらに抑制する技術や、溶接速度を向上させる技術などが加わり、溶接機は常に進化し続けています。
最新の溶接技術を導入することで、製品の品質向上や生産効率の向上が期待できるでしょう。
バリ取り機
バリ取り機は、加工後に部品に残ってしまう突起をきれいに取り除くための機械です。
バリは製品の品質や安全性を損なう要因となるため、バリ取りは重要な工程です。
バリ取り機を使用することで、金属やプラスチック部品の表面を滑らかに仕上げられ、製品の品質と安全性が向上します。
手作業でのバリ取りは時間と労力がかかりますが、バリ取り機を導入することで作業効率を大幅に向上させられます。
また、バリ取り機はさまざまな素材に対応できるという点も大きなメリットです。
金属だけでなく、プラスチックや木材など異なる素材に対応できるため、幅広い産業分野で活用されています。
近年では、自動化されたバリ取り機も登場しており、これまで人手に頼っていた作業を自動化することで、さらなる効率化を実現。
自動化により人為的なミスを減らし、安定した品質でバリ取り作業を行うことが可能です。
精密板金加工で使用される機械の導入コスト
精密板金加工で使用される機械の導入コストは、以下の要因によって大きく変動します。
機械の種類と機能
精密板金加工には、さまざまな種類の機械が使用されます。それぞれの機械は異なる機能を持ち、加工内容や用途に応じて使い分けられます。代表的な機械としては、レーザー加工機、タレットパンチプレス、プレスブレーキなどが挙げられるでしょう。
レーザー加工機は、レーザー光を用いて金属を切断したり、穴あけ加工を行ったりする機械です。高精度な加工が可能で、複雑な形状の部品製作に適しています。導入コストは小型機なら数十万円から、大型機になると1億円を超える場合もあります。多品種少量生産なら小型でも対応できるかもしれませんが、大量生産をしたい場合は大型を導入する必要があり、相応のコストがかかるでしょう。
タレットパンチプレスは、回転式の金型にセットされた複数のパンチを打ち抜くことで、板金に穴あけ加工を行う機械です。一度に多数の穴を加工できるため、生産性が高いのが特徴です。数千万円から数億の導入コストがかかります。
プレスブレーキは、板金を曲げて立体的な形状を形成する機械です。曲げ角度や曲げ位置を正確に制御することで、高精度な曲げ加工を実現します。プレスブレーキの導入コストは、数万円から数百万円です。
これらの機械は、それぞれ異なる機能と特徴を持つため、価格もさまざま。一般的に、高精度な加工が可能な機械ほど高価になる傾向があります。
精密板金加工を依頼する際には、加工業者にどのような機械が導入されているかを確認し、加工内容や予算に合わせて適切な業者を選択することが重要です。
メーカーとモデル
精密板金加工に用いられる機械は、さまざまなメーカーから多種多様なモデルが販売されています。それぞれ性能や機能、価格が異なるため、加工業者を選ぶ際には、導入されている機械のメーカーやモデルにも注目しましょう。
一般的に、知名度の高いメーカーの機械は、信頼性が高く、アフターサービスも充実している傾向があります。また、最新のモデルは、従来機種に比べて性能や機能が向上しているだけでなく、省エネルギーや環境への配慮など、さまざまな面で進化を遂げています。
しかし、最新機種や高機能な機種は、価格が高くなることも。そのため、加工内容や予算に合わせて、適切なメーカーとモデルの機械を選定する必要があります。
加工業者のWebサイトやカタログなどで、導入されている機械のメーカーやモデルを確認できます。必要があれば、メーカーの評判やアフターサービスの内容などを調べることも有効です。
信頼できるメーカーの機械を導入している加工業者を選ぶことで、安定した品質の製品を供給してもらえるでしょう。
自動化レベル
精密板金加工の現場では、生産性向上と品質安定のために、自動化が進んでいます。ロボットや自動搬送システム、コンピュータ制御による加工機など、さまざまな自動化技術が導入されています。
自動化レベルが高いほど、人手に頼る部分が減り、人為的なミスやバラつきを抑制することが可能です。その結果、製品の品質が安定し、生産効率も向上します。
また、人件費の削減にもつながるため、コスト競争力を高めるうえでも有効です。
しかし、自動化された機械は、導入コストが高くなる傾向があります。ロボットや自動搬送システムなどは、高価な設備投資が必要となる場合があり、すべての加工業者で導入が進んでいるわけではありません。
自動化レベルは、加工業者の規模や得意とする加工内容、そして経営方針によって異なります。大量生産を得意とする業者は、高いレベルの自動化を導入していることが多いでしょう。
精密板金加工を依頼する際には、自動化レベルも考慮することで、コストと品質のバランスを最適化できます。
設置とメンテナンス
精密板金加工機の導入コストを考えるうえで、機械本体の価格だけでなく、設置費用やメンテナンス費用も見積もることが重要です。
レーザー加工機やプレスブレーキなどの大型機械は、設置場所まで搬入し、設置作業を行う必要があります。設置場所によっては、クレーン車を使用したり、床の補強工事が必要となる場合があり、これらの費用が追加で発生します。
また、精密板金加工機は、定期的なメンテナンスが欠かせません。稼働状況に応じて、部品交換や調整、清掃などを行い、機械の性能を維持する必要があります。メンテナンス費用は、機械の種類や稼働頻度によって異なりますが、長期的な運用コストに大きく影響するでしょう。
事前に、設置費用やメンテナンス費用について、加工業者に確認しておくことが大切です。見積もりを依頼する際には、これらの費用が含まれているかを確認しましょう。
導入コストだけでなく、ランニングコストも含めたトータルコストで判断することで、より経済的な設備投資を行えます。
カスタマイズオプション
精密板金加工では、標準的な仕様の機械に加えて、カスタマイズオプションを追加できる場合があります。カスタマイズオプションとは、特定の加工ニーズに対応するために、機械の機能を拡張したり、特殊な装置を追加したりすることです。
たとえば、レーザー加工機に自動焦点調整機能を追加したり、プレスブレーキに特殊な金型を装着したりするなど、さまざまなカスタマイズが可能です。
カスタマイズオプションを追加することで、より高精度な加工や複雑な形状の加工に対応できるようになり、製品の品質向上や生産効率の向上が期待できます。
しかし、カスタマイズオプションを追加すると、その分コストが増加する点には理解が必要です。オプションの価格や種類は、機械の種類やメーカーによって異なります。
精密板金加工機を導入する際には、標準仕様で対応できるのか、それともカスタマイズオプションが必要なのかを検討する必要があります。もし、カスタマイズが必要な場合は、事前にオプションの内容と価格について、加工業者に確認しておくことが重要です。
必要最低限のカスタマイズに抑えることで、導入コストを抑えつつ、必要な機能を確保できます。
精密板金業者の選び方
精密板金業者を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
技術力の確認
精密板金加工は、高い精度と品質が求められるため、それを実現する技術力がきわめて重要です。設計から加工、仕上げ、検査に至るまで、すべての工程で高い技術力が求められます。
特に、加工技術と溶接技術は、製品の精度や品質を左右する重要な要素です。熟練した技術者は、材料の特性や加工方法を熟知しており、最適な加工条件を設定することで、高精度な加工を実現します。
溶接技術においても、溶接方法の選択、溶接条件の設定、溶接後の仕上げなど、さまざまなノウハウが必要です。溶接不良は、製品の強度不足や外観不良につながるため、高い溶接技術を持つ技術者が求められます。
技術力が不足している場合、寸法精度が満たなかったり、溶接不良が発生したりするなど、製品の品質に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。そのため、精密板金加工を依頼する際には、加工業者の技術力をしっかりと確認することが重要です。
実績や経験豊富な加工業者を選ぶことで、安心して高品質な製品を手に入れられます。
最新設備の導入状況
高品質な精密板金加工を実現するためには、加工業者がどのような設備を導入しているかを確認することも重要です。最新の設備機器は、加工精度や生産効率の向上に大きく貢献します。
たとえば、レーザー加工機やタレットパンチプレス、プレスブレーキなどの加工機は、年々進化を遂げており、新しい機種ほど高精度、高効率、省エネルギーなどの特徴を備えています。
また、自動化システムや検査装置など、最新の技術が導入されることで、品質向上や人為的ミスの削減につながります。
古い設備では加工精度が低かったり、加工に時間がかかったりするだけでなく、故障のリスクも高まるでしょう。最新の設備を導入している加工業者であれば、高精度な加工、納期の短縮、コスト削減など、さまざまなメリットを享受できる可能性があります。
最新設備が採用されているかどうかを確認するためにも、加工業者のWebサイトや会社案内などで、導入設備一覧は目を通しておいた方がいいでしょう。見学や問い合わせなどを通じて、積極的に情報収集することも大切です。
設計部門の有無
精密板金加工を依頼する際には、加工業者に設計部門があるかどうかを確認することも重要です。設計部門を有する業者は、設計から製造までを一貫して行えるため、さまざまなメリットがあります。
まず、設計から製造までを一貫して行うことで、情報共有や連携がスムーズになり、より顧客の要望に沿った製品を製作できます。また、設計部門と製造部門が密に連携することで、設計段階で製造上の制約を考慮したり、設計意図を正確に反映したりすることが可能です。
特に、複雑な形状の製品や試作品を製作する場合は、設計部門の存在が大きなメリットとなります。設計部門が、顧客の要望を丁寧にヒアリングし、実現可能な設計を提案することで、試作段階での手戻りを減らして、開発期間の短縮につながります。
また、設計部門があることで、設計変更やトラブル発生時にも迅速な対応が可能です。設計部門が窓口となることで、顧客とのコミュニケーションが円滑に進み、スムーズに問題解決ができます。
納期対応力
精密板金加工において、納期対応力は重要な要素です。特に、試作品製作や製品開発の初期段階では、設計変更や修正が頻繁に発生し、短納期での対応が求められるケースが多いです。
納期対応力が高い業者は、顧客の要望に柔軟に対応し、迅速な製作を可能にします。これは、試作品製作のスピードアップ、製品開発期間の短縮、市場投入の早期化など、さまざまなメリットにつながるでしょう。
精密板金加工を依頼する際には、納期に関する要望を明確に伝え、それに対応できるかを確認することが重要です。過去の納期遵守率や、急な依頼への対応力などを参考に、信頼できる業者を選びましょう。
コスト削減提案能力
精密板金加工において、コスト削減は常に重要な課題です。高品質な製品を製造しつつ、いかにコストを抑えるかが、企業の競争力を左右すると言っても過言ではありません。
コスト削減を実現するには、設計段階から製造工程、そして納品に至るまで、あらゆる段階での工夫が必要です。たとえば設計段階では、部品点数を減らしたり、標準部品を採用したりすることで、材料費や加工費を削減可能です。
製造工程では、加工方法や工程の見直しによって、作業時間や人件費を削減することが可能になります。また、材料の歩留まりを向上させることで、材料費を抑えられるでしょう。
さらに、生産管理システムの導入や在庫管理の効率化など、間接的なコスト削減も重要です。無駄な作業や在庫を減らすことで、全体的なコスト削減につながります。
精密板金加工を依頼する際には、加工業者がコスト削減に対する意識を持ち、積極的に提案を行ってくれるかどうかを確認しましょう。経験豊富な業者は、過去の事例やノウハウを活かし、顧客の要望に応じたコスト削減の提案をしてくれるはずです。
課題解決力
精密板金加工は、ただ図面通りに製品を製作するだけでなく、さまざまな課題を解決しながら進めていくことが大切です。
設計段階では、強度や精度、コスト、納期など、さまざまな条件を満たす最適な設計を導き出す必要があり、製造段階では、材料の特性や加工方法による制約、加工精度、品質管理など、克服すべき課題が次々と現れます。
このような課題に対して、豊富な経験と知識を持つ加工業者は、現場目線で的確な解決策を提示できます。たとえば、材料の選定や加工方法の変更、工程の改善などを提案することで、品質向上やコスト削減、納期短縮などを実現できる場合も。
また、予期せぬトラブルが発生した場合でも、迅速かつ柔軟に対応できる能力も重要です。問題の原因を的確に分析し、適切な対策を講じることで、納期遅延や品質低下を防げます。
精密板金加工を依頼する際には、加工業者が課題解決能力を持っているかどうかを見極めることが重要です。過去の事例や実績、技術者の経験などを参考に、信頼できる業者を選びましょう。
精密板金加工の最新技術
精密板金加工の最新技術には以下のようなものがあります。
ファイバーレーザー溶接
ファイバーレーザー溶接は、精密板金加工において近年注目を集めている溶接技術です。従来の溶接方法に比べて、さまざまなメリットがあり、高品質な製品の製造に貢献しています。
ファイバーレーザー溶接は、光ファイバーを用いて生成したレーザー光を熱源として金属を溶接する方法です。レーザー光は非常にエネルギー密度が高く、精密な制御が可能なため、高精度な溶接を実現できます。
従来の溶接技術では、溶接部に隙間ができたり、熱影響範囲が広範囲に及んだりすることがありました。しかし、ファイバーレーザー溶接では、レーザー光をピンポイントに照射することで、隙間のない美しい溶接面を作れて、熱影響範囲も最小限に抑えられます。
特に、薄板アルミニウムの溶接にファイバーレーザー溶接は効果的です。アルミニウムは熱伝導率が高いため、溶接時に熱変形が起こりやすいという課題がありました。
しかし、ファイバーレーザー溶接は、熱影響範囲が狭いため、変形を抑えながら高精度な溶接を行えます。
レーザー切断技術
レーザー切断技術は、精密板金加工において、高精度かつ複雑な形状の部品を製作するために欠かせない技術です。レーザー光を材料に照射することで、溶融・蒸発させ、切断を行います。
この技術の最大のメリットは、その高速性と高精度にあります。レーザー光は非常に細いビーム状に集光できるため、材料を正確に切断でき、複雑な形状の部品製作に最適です。
従来の切削加工では、複雑な形状を加工するために、複数の工程が必要となる場合がありました。しかし、レーザー切断技術であれば、一度の加工で複雑な形状を切断でき、加工時間の短縮とコスト削減に貢献します。
特に、ギヤのような複雑な形状の部品を製作する場合、レーザー切断技術は従来の切削加工よりもコスト効率に優れていると言われています。レーザー切断技術は、精密板金加工の効率化と高精度化を同時に実現する、革新的な技術と言えるでしょう。
スポット溶接
スポット溶接は、精密板金加工において、薄い板材を接合する際に用いられる代表的な溶接方法です。電極を用いて板材同士を加圧し、そこに大電流を流すことで、抵抗熱を発生させて接合します。
スポット溶接は、溶接時間が短く、熱影響範囲が狭いため、熱による歪みを最小限に抑えられます。そのため、精密板金加工のように、薄い板材を扱う場合に適しているでしょう。
また、スポット溶接は自動化が容易なため、大量生産にも向いています。ロボットなどを用いて自動化することで、溶接品質の安定化と生産効率の向上が叶いやすいです。
精密板金加工では、さまざまな材料が使用されますが、スポット溶接は、鉄、ステンレス、アルミニウムなど、多くの金属材料に対応できます。特に、無酸素銅などの材料を用いたスポット溶接は、高い導電性と耐食性を実現できるため、電気・電子部品の接合などに利用されています。
このように、スポット溶接は、精密板金加工において、高品質な製品を効率的に製作するために欠かせない技術です。
精密板金加工は複雑な部品を高精度で作るのに有効な技術
この記事では、精密板金加工について解説しました。精密板金加工は、従来の加工方法では難しい複雑な形の部品を製造したり、扱いが難しい素材に柔軟に対応できるのが魅力です。
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作業者の力量によって精度にばらつきが出るため、加工に不安がある場合や複雑な部品の大量生産を行いたい場合は、業者への依頼も検討するといいでしょう。
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